
日本の内海(うちうみ)は高度経済成長期に大きな変貌を遂げ、様々な環境問題を内包した状態で今日に至っています。堺市の沿岸域を含む大阪湾奥部はその典型とも言えます。干潟や海浜などの浅場が消失した極めて閉鎖性が強い過栄養海域では、貧酸素水塊が発生し、生物多様性や親水性の低下などの問題が依然として生じています。このような状態の一因として、陸から流入する過剰な栄養負荷が上げられます。過剰な栄養物質は我々の生活から排出されるもので、経済社会の影響が“ひずみ”となって沿岸域に滞留・蓄積されていると言えます。「循環型社会形成推進法」に基づき様々な製品や物質の循環利用が進められていますが、こと栄養物質については、河川や湾奥部の閉鎖性海域に集中・蓄積しており、十分に循環利用されているとはいいがたい状況です。一方で、湾口部に近い海域では、湾奥部の潮流が埋立で阻害されることなどにより、淀川や大和川から運ばれる栄養物質が不足し、のりの色落ちが生じるなど新たな問題が発生しています。
魚介類などの食料、安らぎの空間、新たな文化など、『豊かな恵み』を与えてくれる「内海(うちうみ)」ですが、高度経済成長期には干潟や浅海域は埋め立てられ、工場等の「土地」としての役割を果たし、また、排水やゴミなど私達の身勝手な「都合」を受け入れ続けてきました。今度は、私たちが、海に恩返しをし、陸と海を一体に捉えた真の循環型社会、持続可能な社会を実現しなければなりません。
「大阪湾環境再生研究・国際人材育成コンソーシアム」及び同コンソーシアムを運営する主体としての「一般社団法人 大阪湾環境再生研究・国際人材育成コンソーシアム・コア」は、以下の事業を推進する産・官・学・民の連携と協働のためのプラットフォームとして、海の環境保全・再生と関連産業の創出・活性化を目指します。
◇沿岸域における食物連鎖と生物多様性の回復、海水の浄化促進に寄与する干潟や浅場などの整備、水環境技術の開発、鉛直混合促進等による大阪湾環境再生事業
◇大量に発生する藻類などのバイオマスを利用し、海洋性バイオ産業等を推進することにより、栄養物質の円滑な循環や海の持つブルーカーボン機能の向上などを目指す環境型事業
◇アジアをはじめとする諸外国の環境問題に携わる実践的・国際的な環境人材育成事業
これらの取り組みは、環境技術の研究・開発にとどまらずその事業化を目指すものであり、ご関心のある皆様方のご参加をお願い申し上げます。
発起人(※平成24年9月3日当時) | |
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大阪府立大学学長 | 奥野 武俊 |
大阪市立大学学長 | 西澤 良記 |
堺 市 長 | 竹山 修身 |
広島工業大学大学院教授 | 上嶋 英機 |
大阪市立自然史博物館長 | 山西 良平 |
堺商工会議所会頭 | 前田 寛司 |
財団法人サントリー文化財団上席フェロー | 佐藤友美子 |
設立役員(※平成24年9月3日当時) | |
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広島工業大学大学院教授 | 上嶋 英機 |
大阪府立大学大学院教授 | 大塚 耕司 |
大阪市立大学大学院教授 | 矢持 進 |